前回、右手~弓の持ち方~で弓の持ち方を、良い音がでるなら弓をどう持っても構わない、と、かなり無責任な書き方をしてしまったような気もしますが、良い音がでるならどう持っても構わない、それを裏付ける事を一つ綴ろうと思います。

弓を持つ時の親指の位置というのは、おそらく殆どの教則本で、フロックの凹んでる部分の付け根のボウ(棒)の部分を持つ、となっていると思います。

これと真っ向から違うのがロシアメソードで、ロシア流派では、フロックの凹んだ部分に親指がきます。

ロシアメソードでは親指はボウの部分には触れません。

この事は、私も私が滞欧中、ロシア人チェリストのヤンコヴィッチ氏(素敵な女性です)から聞いて初めて知った事でした。

その時、ヤンコヴィッチ氏(とてもカッコいい女性です)に詳しく質問したのですが、今尚ロシアメソードの早期教育では、親指はフロックの凹んだ部分にと教えているそうです。

ヤンコヴィッチ氏(ジャンヌダルクのような方です)は、モスクワでロストロポーヴィッチ氏に師事した後、パリでナヴァラ、フルニエ両氏に学んでいたので、その際両先生からインターナショナルな持ち方に直すよう言われませんでしたか?とも聞いたんですが、強制されなかったそうです。

ヤンコヴィッチ氏(惚れ惚れとする女性です)は現在、デトモルト音大教授として教鞭も執ってらっしゃるので、おそらく生徒はインターナショナルな持ち方(ボウの部分を持つやり方)をしていると思いますが、あなたのようにロシアメソードで持つよう直しますか?とも聞いてみたんですが、きちんと弓をコントロール出来るのであれば、持ち方に関しては強制しないとの事でした。

さらに、やはりロシア人でロストロポーヴィッチ門下、師のアシスタントも務めた後、ドイツに渡り、ミュンヒェンを中心に早期教育者として沢山の俊英を輩出しているグリゴリアン氏も、親指はフロックの凹んだ部分と指導しており、氏の門下生ドイツ人は皆、ドイツ人ながらロシア式で弓を持っています。

この一例だけで、良い音がでるなら弓をどう持っても構わないと結論付ける事は出来ないでしょうが、正しい持ち方というのが、きちんと弓をコントロールできる持ち方という事は、ご理解いただけるのではと思います。

上の動画はヤンコヴィッチ女史の動画ですが、カメラのアングルが後ろに回った時、女史の親指がフロッグの凹んでいる所を持っているのが伺えるかと思います。(ことごとくCの音程をお外し遊ばされているのが・・・。私が知り合った時は、音を外すなんて考えられない様な感じでしたが、体調が悪かったのかな。。。)

蛇足ながら、一世一代の大チェリストであったフォイアマン氏も、親指はフロックの凹んだ部分を持っていたそうです。

そして、フォイアマンの弟子で、日本のチェロ教育の祖、斉藤先生も親指はフロックの凹んだ所を持っていて、そのように指導したそうですが、面白いことにこの持ち方、日本では根付かなかったようです。

この辺の事は、斎藤秀雄のチェロ教育という本の中で、今の日本のチェロ界の先生方によりに詳しく議論され、書かれています。

おそらくですが、親指の場合、持つ位置よりも柔軟性というか、親指がそっくり返ってしまって弓を握ってしまっていることの方を厳しく注意する先生の方が多いようにも思います。